
高出力赤外線LEDを100個使用した赤外線投光器により、最大72mの音声伝送が可能な機器です。昔作った物なのでところどころ変な設計をしていますがご容赦ください。
上の図では左から制御器、投光器、受信器の順に並べています。
機器の概要
制御器に入れた音声信号を投光器で光に変換し、その光を受信器で受けてスピーカを鳴らすものです。
投光器は浜ホトの高出力赤外線LED L12170を100個搭載し、最大放射束10Wの赤外線を放射します。エネルギー密度でいうと太陽光の約2倍になります。受信器はフォトトランジスタ NJL7112Bを64個並列に接続し、スピーカを備えています。
ちなみにこのL12170ですが、秋月で1個300円というLEDにしては桁違いの値段です。これを100個並べているのでLEDだけで3万円します。
回路図
制御器・投光器

回路図左側の制御器では3.5mmステレオジャックから音声信号をモノラルに変換して入力し、バイアス電圧と投光器出力の調整を2個のVRで行います。LED101は赤外線LEDの電流がクリップした際に点灯します。電源は24V6.5Aのスイッチング電源から供給します。
バイアス電圧は、無信号時に赤外線LED1個当たりの電流が140mAとなるように設定します。この回路はA級増幅をしており、かつL12170の定格順電流(DC)が300mAなので、約半分に設定すればよいということです。
投光器では赤外線LED100個を制御しています。今見返すと過電流保護が付いてないのであまり良くない。。何かの拍子で過電流が生じたら1個300円のLEDが10個単位でパーになります。
受信器

アンプは付けていません。受光素子マシマシでパワーを稼ぐため、フォトトランジスタNJL7112Bを64個並列にしています。これらで投光器からの光を面で受け、電流の変化でスピーカを駆動します。電源は9VのACアダプタから供給します。
製作
制御器

基板を縦に取り付けたかったのでL型の金具を使用しています。これはどこで手に入れたか忘れてしまったんですが、タミヤのモータを使った工作キットの付属品だった気がします。今だったらマックエイトのL型ブラケットとか使った方が良いんでしょうかね。

スイッチング電源とともにケースに入れます。かなりギリギリです。基板とスイッチング電源の間はアクリル板を挟んで絶縁しています。
投光器

モーニング・電子工作

イブニング・電子工作

基板は連結ピンヘッダで2段重ねにし、上段に赤外線LEDを100個実装します。

ケースも加工します。ハンドニブラを買う前なのでかなり面倒な穴の開け方をしています。
受信器

部品はケースの片方のみに取り付けると組み立てや修理が楽になります。

フォトトランジスタが蓮コラっぽい
光らせてみる

投光器を最大出力で光らせた様子です。LEDに流れる電流の和はなんと2.5A! エネルギー密度は0.18 W/cm2で太陽光の約2倍に相当します。面に手をかざすと赤外線効果でジワジワ温かくなるのを感じます。こんなのを直視していたら白内障のリスクが高まるでしょう。
先述しましたがこの機器はA級増幅で、無信号時も最大出力の半分が出ています。つまり音が鳴らないのに常に太陽光と同程度のエネルギーを放出しており、アンチSDGsの塊みたいな仕様になっています。
音声を送受信する
動画にしました。投光器と受信器を向かい合わせて音声を入力すると、受信器のスピーカから大音量で音楽が聞こえてきます。机の間に架かっているケーブルは電源用で、受信器とは繋がっていません。またこの時は音声信号を確認するため、何個かLEDを抜いてオシロを接続しています。

次にどこまで音声を伝送できるか調べました。上の写真は投光器から72m離れた受信器の地点で撮影しています。受信器のスピーカに耳を当てるとかすかに音楽が聞こえてきます。出力電流(スピーカに流れる電流)は1.07mAで、投光器を切ると0.52mAに下がりました。これ以上距離を離すと聞こえなくなります。

投光器-受信器間の距離と受信器の出力電流の関係をグラフにすると、2乗反比例しています。数mAの出力電流でも音は聞こえるので、受信器側の感度はそれなりに良いようです。アンプを付ければもっと長距離の伝送ができるかもしれません。
ということで、パワー系音声伝送器の製作についての記事でした。自己責任で真似するのは構いませんがくれぐれも目は大事にしましょう。